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おしゃべりな部屋 by 川村 元気、近藤 麻理恵
中央公論新社 2022年3月10日
再読本。「春は年度の変わり目。物理的にも精神的にも入れ替えをして、心機一転しよう!」ということで、今の時期にこの本を読んだ。
どんな本?
「片付けのお手伝い」を仕事にしている「ミコ」は、相棒の小箱「ボクス」とともにさまざまな依頼を受けていく中で多種多様な人や物、記憶、考えなどに出会う。
それら1つひとつによって紡がれる、「片付け」がテーマの小説である。
心に響いた箇所の引用
「緑川さん。わたし先ほど、出がらしの本があると言いましたよね」
P64
「鰹節か」
「でも、何度読んでも味が変わらない本もあるんです。むしろ味が出てくる本が」
「スルメみたいだな」
「ミコは捨てるものばかり気にしてるけど、大事なのは捨てることじゃなくて、ときめくモノを見つけることだろ?」
P140
「ときめくモノ……」
小箱に言い負かされて、言葉を失った。間違いだらけの片づけをしていたことに、痛いほど気づかされた。
わたしはそれまで、とにかくモノを減らすことや収納方法ばかりを追求していた。だからいつまで経っても片づけがうまくならず、ついにはモノを憎み始めてしまったのだ。本当に大切なのは、自分の人生を楽しく豊かにしてくれる「ときめくモノ」を見つけるセンスなのに。
「でも親父らしいよな、大事な写真がピンボケって」
P198
「それが人生みたいで好きなのよ。ボケてたり、傾いてたり、明るすぎたり、暗かったり。デジタル写真みたいに、消したり加工したりもできない。だけど、宝物みたいな瞬間がある」
感想と思考
「捨てるものを選ぶのではない。どれを残すかを決めるのだ」
この内容の文に出会ったとき(引用箇所参照)、私は急に目が覚めたような気がした。一見、どちらも同じことを言っているように思える。けれどよく考えてみると、この2つは似ているようで対照なことなのだと気がつくことができる。
「捨てるもの」を選ぼうとするとき私は、きっとマイナスの感情を多く持つことになる。「どのモノが嫌いか」「どれが必要なく、役に立たないモノなのか」「どのモノならば、べつになくても過ごすことができるのか」などなど。
一方で「残すもの」を選ぶときの私は、プラスの感情がよりはたらくはずだ。「どれが自分の好きなモノなのか」「心が踊るのは、どんなモノと一緒にいるときなのか」「素敵な思い出が蘇るのは、一体どのモノなのか」などと考える時間の、なんとまあ幸せなことか!先の「捨てるもの」を選んでいたときとは、大違いだ。
これからもまた一緒に過ごしたいと思える、自分にとって「ときめくモノ」を選び抜く。もちろんそこで選ばれるのは必ずしも、新しかったり、綺麗だったりする方だとは限らない。けれどそんなことは、さほど重要ではない。
古くてもいい。ピンボケでもいい。大切なのは……自分にとってそれが「宝物」であるかどうか、これだけなのだ。
以上が、私が今回本書を読んで抱いた感想である。
「片付け」や「掃除」。それらを丁寧に行おうする、というのはすなわち「自分自身に心から向き合う」ということを意味する(と、私は思う)。それはときに苦しかったり、辛かったりすることもあるだろう。けれど……乗り越えた先には清々しい、アップデートされた自分がいるのだ。
今度の日曜日には私も、「春の大掃除」をしてみようかな。そして願わくは……心ときめく宝物たちに囲まれた、幸せな毎日を送るんだ。