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数日前、とある理由から下の本『トラウマのことがわかる本』を読む気になった私。というのも実はこの本、かれこれ半年間ほど購入したきり積読として放置されていたものなのだ。^^;
購入した当時の私はまだ、「PTSD」「トラウマ」といったことがらについて知識がほぼゼロに等しかった(もちろん今の私にだって、じゅうぶんな知識があるとは到底思ってなんかいないけれどね。少しずつ少しずつ……亀のペースで勉強中、なのです)。だからこのくらいの薄い本でさえも、読み通すのにはそれなりの体力が必要だったのだ(と、思う)。
それなのに。今回この本を改めて開き読み始めてみると、驚くことにそれほどストレスは感じなかった。もちろん……この本はものすごく難しいものだというわけではないし、トラウマなどについて初めて学ぶ人たちにも理解しやすいように書かれた本であることも確かだ。けれどそうはいっても……過去の私はそれさえもまだまだ噛み砕く力はなかったのに、今の私はとりあえずこの本の内容ほどであれば「ふむふむ、まあそうだよね」「なるほどなるほど。確かにそこはそうなるよね」などと理解しながら、読み進めることができると分かったわけだ。素直に、嬉しかった。
ちなみにこの一連の出来事(と言っても、自分の頭の中のみで完結していることにすぎないのだけれど。笑)に触れて、私は以前読んだある本の一節を思い出した。『はじめての精神医学』というちくまプリマー新書から刊行されている本なのだけれど、なかでも私が思い出したのは以下の部分だ。↓
開発された根本治療薬に効果があるとしても、その効果がどの程度のものかについてはもうしばらくその見極めに時間がかかります。現時点で、アルツハイマー病に対してとることができる予防手段で一番たしかなことは、若いうちから認知能力・知的能力を「貯金」しておくことです。こうして蓄えられた貯金のことを「認知予備能」と言います。皆さんが高校生であれば、今、学校で学んでいる退屈な数学、国語、英語、地理、歴史などがいったいなんの役にたつのか、と感じているかもしれません。ところが、こうした基礎学力があることによって、大人になったあと、読むことのできる本、理解することのできるもっと専門的な授業が増えることにあります。難しいことを考えることができるようになると、皆さんはさらに自分の脳をよく使うようになります。
『ちくまプリマ―新書387 はじめての精神医学』P134~135, 村井 俊哉 (著), 2021年10月10日
今、私が書いている本は、わかりやすさを重視して、専門用語を減らし、同じことを繰り返すような文体にしています。しかし、そういう工夫がなく、同じ内容がもっと短く圧縮され、専門用語をずっと増やした本であったとしても、行間を自分で補いながら読み進める力ができてきます。さらには、ただ読んで、そうかそうかと鵜呑みにしたり、なんとなく漠然と不愉快になったりするだけでなく、どの部分はどういう意味で賛成なのか、どの部分は自分自身とどう考えが違うのか、をまとまった文章として表現できるようになります。つまり現実という複雑なことがらを、様々な角度から多面的に理解し、ある観点からみるとこのように考えることができるが、別の観点からみるとまた別のように考えることができる、というものの考え方を身につけることができるようになります。これは、心理学の用語で integrative complexity (インテグレティブ・コンプレクシティ、統合された複雑さ)と呼ばれる能力のことです。さらに、もう一歩進めて、そのような多面的な見方や価値観の中で、自分自身の立場や価値観を選び、そしてその立場や価値観から社会に対して意見を述べたり、働きかけたりすることができるようになります。傍観するだけでなく働きかけられることを「関与」、英語では「コミットメント」と呼びます。
(P134~135)
上記の引用箇所は「認知症」についての章からで「認知予備能」の大切さについて述べられている部分なのだが、この「自分のなかに『貯金』があれば、さらに難解であったり複雑であったりするものごとに出会ったときでも自力で咀嚼できるようになる」という筆者の意見に、私はおおいに賛成した。そうだ。そうなのだ。
なにもこれは、認知症に限った話ではないのだと私は思う。基礎がなっていなければ、分かるものも分からない。例えば、私にはまだハーマンの『心的外傷と回復』やコークの『身体はトラウマを記憶する』などを自力で読み通すことはできない(何度か挑戦してみたことはあるが、やはり難しかった)。でもそこで諦めてしまうのではなくて、少しずつ少しずつ、基礎の部分から確実に積み上げていけばいつかはそれらを理解することも可能なのだ……と、私は思う(そう信じたい)。
私自身、を理解するためにも。この世界、の解像度を今より少しでも上げるためにも。私は私なりのペースで、「マイ貯金」を豊かにするべくこれからも学び続けたいな。
今回引用した本
『健康ライブラリー イラスト版 トラウマのことがわかる本 生きづらさを軽くするためにできること』
白川 美也子 (監修), 講談社, 2019年6月25日
『ちくまプリマ―新書387 はじめての精神医学』
村井 俊哉 (著), ちくまプリマ―新書, 2021年10月10日
※上記の本『はじめての精神医学』を以前読んだときの読書記録は、下記の投稿にて。↓