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『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』
花丘 ちぐさ (著), 春秋社, 2020年11月25日
図書館本。ポージェス博士が提唱している「ポリヴェーガル理論」について、専門用語などをなるべく使わずにやさしく紹介されている。
気になった箇所の引用と、考えたこと
1つ目:「自律訓練法」について
自律神経系に働きかける――自律訓練法
少し専門的になりますが、「自律訓練法」もとても役立ちます。これはイメージを順番に思い浮かべていって心と身体をリラックスする方法です。手足が重たいとか、手足が暖かいとか、こうした言葉を順番に思い浮かべていきます。やり方を解説した本なども出ていますから、調べてみてもよいでしょう。個人的には、私はこの「自律訓練法」にはずいぶん助けられました。幼い頃のトラウマ的な体験から、私は乗り物、特に飛行機に乗るのが怖かったのですが、「自律訓練法」を使うことによって、世界のいろいろなところに行けるようになりました。今でも飛行機は少し怖いのですが、飛行機が気流の悪いところを通過し、揺れているときは、私は飛行機の中でこの自律訓練法を行っています。
p150
この「自律訓練法」の紹介を読んだとき私は、『おやすみロジャー』という絵本の内容(の一部分)を思い出した。幼いころに何度か読んでもらったことのあるものなのだが、その中で確か「今寝転がっている(横になっている)自分の手足が、だんだん重くなっていくことを意識する」よう語られる場面があった、気がするのだ(フクロウおじさん?のナビゲートによって、だったような……)。
あの頃は単純に「なんだかひとりでに眠気がやってくる、不思議なお話だなあ」くらいにしか思っていなかったけれど、もしかすると本当は、いろいろな手法や療法などを下敷きにしてかかれていた絵本だったのかもしれない……といまさらながら気が付いた。
また近いうちに一度、実際に『おやすみロジャー』を読んで確認してみようと思う。
2つ目:「マインドフルネスの注意点」について
「マインドフルネス」も注意が必要
「今・ここに意識を集中する」というやり方で瞑想などの技法を用いる「マインドフルネス」も最近大流行しています。集中力がついたり、いやなことを考え続けてますます気分が落ち込むといった悪循環を断ち切ることもできると言われています。これも、ある程度心の状態が健全な人には、素晴らしい技法です。しかし、発達性トラウマを持つ人は、単純に「マインドフルネス」を試す前に、ご自分の状態をしっかりチェックした方がよいかもしれません。
P174
発達性トラウマを含め、トラウマを持つ人は、身体感覚を感じないようにシャットダウンする傾向があります。それは、かつて身体で恐ろしいことを経験したので、なるべく身体に注意を向けないようにする癖がついているからです。なるべく「今・ここ」を感じないようにして生きているのです。そんな状態のところで、急に「今・ここ」を感じようと身体に意識を向けると、フラッシュバックに襲われたり、激しい反応を起こしてしまう恐れもあります。あるいは、ひどい抑うつに落ち込む可能性もあります。ですので、やはりトラウマを抱えた人は専門的なトラウマ解放療法を受けることがよいと思われます。
「自分の身体感覚にふれすぎてしまったとき、嫌な感覚(※私の場合この「感覚」は、先の「身体感覚」とはまた異なるもの)が押し寄せてくる」というのは自分も身に覚えがあったため、この部分を読んだとき私はなんだか妙に納得してしまった。
実は私はこの本を読む数日前に、宮地尚子先生著の『トラウマにふれる』という本を読了している(こちらの本については、まだブログに書くことができないのだけれど……(心に響いた箇所、気になった箇所などが多すぎた)。でも必ずいつか投稿はする)。そちらの本の中でも、「身体」と「トラウマ」のつながりについてはたくさんの見解が述べられていた。そのことからも、「身体感覚」にある種の恐怖というか嫌悪感というか……いわゆる「いやな感じ」を抱いてしまうのはやはり、「気のせい」なんかではないのだということが窺える。
「身体」と「(トラウマ)記憶」の関係性についても、これから少しずつ知識や考えを深められるといいなあ……なんて思う次第だ。
(ちなみに。ひとまず下の本『トラウマによる解離からの回復』↓を、近いうちに読んでみるつもり!)
3つ目:「進化の過程の逆向き」について
ポージェス博士は、ヒトが危機的な出来事に遭遇したときには、進化の過程の逆向きを通って対応すると論じている。これは「解体理論」を基にした考え方である。解体とは、哲学者ハーバード・スペンサーによって紹介された。後にジョン・ヒューリングス・ジャクソンはこの概念を反映させて、脳損傷や脳疾患では、症状が進化とは逆向きの経過を辿ると論じた。ポリヴェーガル理論でも、この「解体」という概念を採用し、自律神経系は、危機に瀬すると、系統発生的な順序とは逆向きに発動されていくとした。
P208
「対応の順序は、進化の過程の逆を辿る」というもの。とても面白い考え方だなあ……と思う。
ちなみにこの部分(引用した部分)を読んだとき私は、いつか聞いた「人が老いたり衰えたりしていくときに『できなくなっていくこと』の順序は、赤ちゃんが順に『できるようになっていくこと』の順序とちょうど逆、対のようになっている」という話を思い出した(どこで誰から聞いたのかは、ちょっと思い出せないのだけれど……)。
医学的なものの見方に、生物学的なものの見方。心理学的なものの見方。「ものさし」となるもの、要は「尺度」には実にいろいろな種類があるけれど、きっとそれらははっきりと独立して存在しているのではなくて、グラデーションのようなものであって必ずどこかに「隠された『つながり』」があるのかな、と私は思う。
「進化」や「生物」などについて書かれた本も、また少しずつ読んでみたい。
4つ目:「LPP」について
◎リスニング・プロジェクト・プロトコル
リスニング・プロジェクト・プロトコル(LPP)は、ポージェス博士によって開発された、聴覚過敏を和らげ、生理学的状態を落ち着かせて、人と関わる機能を高めるようにデザインされたシステムである。ヘッドホンで音を聞くようになっている。この介入方法は、現在はセーフ・サウンド・プロトコル(SSP)と呼ばれている。
P222
LPP/SSPは、コンピューターによって周波数帯を変化させた音楽を聴くことで、中耳の筋肉の神経的制御を活発にし、腹側迷走神経系に影響を与え、自発的な社会交流が生まれることを狙いとしている。六〇分のエクササイズを五日間継続することが求められており、mp3やiPodなどでも聞くことができるようになっている。クライアントがエクササイズをしている間は、養育者やセラピストなどが付き添い、静かで安全な環境でプログラムを聴くことが大切であるとされている。SSPはIntegrated Listening System 社から、専門家を対象に提供されている。
●関連サイト(英文)https://integratedlistening.com/ssp-safe-sound-protocol/
「聴覚過敏」は実は私も持っている症状の1つで、だからこの部分もとても興味深く思いながら読んだ。今までの私は、この症状への対処法は「今聞こえている音からの刺激を和らげる(例えばイヤーマフを使用したり、静かな場所に移動してカームダウンしたり)」しかないと思っていただけに、引用部分で紹介されているこの方法からはとても新しい視点をもらえたな〜と思う(この方法がはたしてどれほど効果・信憑性のあるものなのか……ということについては、また別の機会に調べてみるにしても)。
以前の投稿 ( 読書記録 – 「原っぱ」という社会がほしい (Part 2) | FUTURE KEY (future-key.com) ) のなかでも軽く書いていたけれど、やっぱり、ひとりよがりな思考になるのは良くないよなあ……とつくづく思う。
今の私には、エネルギーがまだちょっとだけ足りないけれど。
もう少し今よりも元気が溜まって外に出ていけるようになったら、またもう一度。ひとやものごとと関わり合えるようになれるといいな、なりたいな。
おしまい。
今まで耳に(目に?)したことは何度もあったけれど、フォーカスした本を読んだのは実は今回が初めてだった「ポリヴェーガル理論」。どこまで信じてよいのかはまだまだ私の知識なんかでは到底判断できないし、だから正直、懐疑的に思う気持ちがない……と言えば嘘になってしまうけれど。
それでもやっぱりとても興味はあるし、この考え方に救われそうな部分がある気もけっこうする。今回読んだのは入門てきな(?)位置づけの本だったことだし、今後はまた、より詳しい内容のものにも手を伸ばしてみようと思う。