読書記録 – 『ドリーム・ライフ』

読書記録 – 『ドリーム・ライフ』


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『Trinitasシリーズ ドリーム・ライフ ~夢の異世界生活~』
愛山 雄町 著, TOブックス, 2016年5月1日

どんな本?

異世界転生ものの、ファンタジー(図書館で借りた)。45歳のおっさんがひょんな願望から「4歳の男の子」として転生し、世界を改革していくというストーリとなっている。……が!!これは、「表向き」のものでしかない。この本の本当の面白さ――読み応えのある箇所は、そう、また別にあるのだ。この巻だと「特別編:『試供品』」の章がそれにあたる。

読むときっと、ムフフというかみしめるような笑いがあふれるはずだ。ぜひ一度、実際に手に取って読んでみたいものなのである。笑

気になった箇所

 サミュエル・ウルマンの「青春=Youth」っていう詩を知っているか?
「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう」っていう書き出しの詩だよ。有名な詩だし、著名人なんかが座右の銘にしていたりするから、知っているかもしれないな。

P3

 俺は話を進めるため、具体的な方法を確認することにした。
「それで、私は何をしたらいいのですか?具体的には?」
『今から二年後にある者を送り込む。その者には敵の手の者からの干渉があるだろう。その干渉から庇護を、そしてできうれば、その者の道を拓くため、教導してやって欲しい』
(道を拓く?イエスに対する洗礼者ヨハネの役どころか?教導ねぇ……面白そうかもしれないな)
 世界を救う英雄の露払い的な役割に対して少し興味を持った。自分が直接世界を救うというのは重すぎるが、露払い的な役割ならそれほど責任はない。
(こちらの方が気楽でいいな)

P46

 この世界には創造神であるクレアトール、そして、三主神と呼ばれる天の神であるカエルム、地の神であるモンス、人の神であるウィータがいる。更に主神とは別に八柱の属性神、火の神イグニス、光の神ルキドゥス、風の神ウェントゥス、木の神アルボル、水の神フォンス、闇の神ノクティス、土の神リームス、金の神フェッルムがいる。これら属性神は魔法との関連が強く、三主神より信仰されているそうだ。

P52

 石鹸は油と苛性ソーダで作ったはずだ。原料の油については、この村にも食用油があることは確認している。問題は苛性ソーダだ。
 良く話に聞く灰から作る灰汁を使う方法は、なかなかうまく行かないと聞いたことがある。藁の灰から灰汁を取り出すのは水に浸すだけだが、分量が分からないと水分が多すぎたり、少なすぎたりして、うまく固まらないのが原因ではないかと思っている。
 そこで苛性ソーダの代替材料がないか、そこから考え始めた。
 苛性ソーダの特徴は何と言っても強アルカリだろう。アルカリで簡単に思いつくのは石灰だ。そして、この村の家には漆喰が使ってある。俺の記憶では、漆喰の原料は消灰石だったはずだ。
 消灰石は水酸化カルシウムだから、水に溶かすと強アルカリになる。これを使えば何とかならないかと考えたのだ。
そして、石鹸の作り方を思い起こす。正直な話、俺の石鹸の作り方の知識は、大昔にテレビで紹介しているのを見た程度しかない。つまり、知識がほとんどないと言ってもいい。原料の油も植物油だったという程度の知識しかないし、灰汁でやる方法は分量やおいておく時間など、重要な情報も全く覚えていない。

P118

 八月に入ると村は猛烈な熱波に襲われるようになる。
 地形が盆地に近いため、風のない昼間には体感だが三十五度を超えている気がしていた。
 さすがに祖父も昼間の訓練を取りやめ、涼しい朝夕に時間をシフトしていた。更に俺たち年少組の訓練メニューも少し減らされ、午前中の涼しい時間だけになった。
(夏は暑くて冬は寒い。京都みたいな気候だな。京都?……川床か!)
 あまりの暑さに辟易としていた俺は、京都の鴨川に作られる”川床”を思い出していた。

P137

「魔法を教えることなんだけど、四歳の子供には早いと思うの。小さい子供は魔力が少ないから……」
 彼女の話では、魔力が少ない子供が魔法を使うとすぐに魔力が底をついてしまう。魔力は生物が生きるために必要な力だそうで、心臓を始め、臓器を働かせるために必要なエネルギーなのだそうだ。
 そのエネルギーが尽きると、まず意識を失い、その次に臓器が働かなくなっていく。そして、最悪の場合、死に至るそうだ。そのため、魔術師の家計でも本格的に訓練を開始するのは七歳以降で、それまでは魔力を感じる訓練や、体内で魔力を操作する訓練に費やすそうだ。

P144

 さらに時間のことをおっしゃったので、それもどうしたらいいかと尋ねた。そう、この村には時計というものがなかったのだ。
 ザカライアス様は、少し考えられた後、簡単な水時計を作ってしまわれた。
 まず、木の棒と糸を使って、地面に模様を描き始め、日時計を作られた。そして、銅製の小さな鍋に小さな穴を開け、下部に水を受ける壷を設置するなどの細工を施された。満足げにそれらを見られた後、水が落ちる時間を日時計で計りながら、途中で何やら計算もされていた。
「さすがに日時計で三十分は大雑把すぎるから、目盛りが打てなくてね。一時間に落ちる水の量から三十分で落ちる量を計算したんだ。鍋の上と下とじゃ穴に掛かる圧力が違うから単純に真ん中ってわけにもいかないから。まあ、大雑把だけど、大体の目安程度かな。そうそう、穴の大きさが変わると時間が変わるから、毎日布で磨いて欲しいんだ」
 水の圧力で計算が必要とはどういう意味なのか、私には理解できなかったが、作られた水時計は一時間用とのことで、三本の目盛りが打たれていた。

P194~195

感想と思考

実は私、この本を読むのはものすごく久しぶりだった。というのも10歳?11歳?くらいのとき、私はこの本がとてつもなく大好きだったのだ……!

それまでの私は図書館では、もっぱら「児童書」の棚から借りていた。けれどその頃には少しずつ「YA(ヤングアダルト)」の棚にも手を伸ばし始めていた。この本(シリーズ)はその中でも、特に気に入っては何度も何度も借りて読んでいた本だったのである。


あの頃の私(というかもはや、周りも含めて “あの” 時期全般)については、思い出したくないことがまあ~たくさんある。笑

学校という場所がしんどくてしょうがなくて、しょっちゅうお休みしたり保健室に寝にいったりしていたこと。毎日のように、泣いて暴れてはひどい言葉を放っていたこと。「学校」も「家の中」も、その両方がいろいろと荒れて当時の私にとっては「怖い場所」になっていて(詳細はここには書かないけれど)、「現実世界に逃げ場なんてない」「安心できる場所なんてない、人なんかもいない」とさえ思っていたこと、えとせとら。

まあ今の自分が “あの頃” にいるのならば「大丈夫だよ、きっと何とかなるからさ~」と言える事柄も少しはありそうな気もするけれど。だけど、それでも「よく頑張っているんだね。」って言いつつ頭をなでに行きたくもなるから、「私なりに葛藤していたし苦しい気持ちがあったんだろうなあ」なんて、やっぱり思ってあげたりもする。

……で。そんなときでも私の味方になってくれていたもの、その1つが「本」だった。


たぶん、毎日1~2冊のペースでは読んでいたと思う。図書室のすみで、日のさす教室で、夕暮れどきの公園の木の下で、そして布団の中で。あの頃の私が過ごしていたありとあらゆる場所には、いつもかならず、傍らにだいすきな「本」があった。その1冊がいてくれるだけで、どんな場所でもそこは私の、「安全基地」にはやがわりした。

今、もし……。もし、願いがたった一つでもかなうなら。幼い私に会いに行って、そっと頭をなでてあげたい。無力ながらも、なにもできない自分ながらも、必死でその小さな私にでも使える「魔法」を探して毎日を生き延びようとしていた私を、心の底からだきしめてあげたい。よくがんばっているね、ってこっそり耳元でささやいてあげたい。


今でもあの時期のことを思い出そうとすると、どこか胸の奥がちくりと痛むような気がするけれど。だからこの本のストーリーを追うと、こみ上げてくる笑いで胸がいっぱいになると同時に、ほんのすこしだけ苦しさも溢れ出てくるような気もするけれど。

それでもやっぱり、私はこの本が好きだなと思う。なにもできない私にそっとありえない魔法を授けてくれた、この本はやっぱり、私の大切な大切な一冊だ。


※この投稿は、2023年11月に下書きに途中まで書いたきり放置していたもの。「図書室のすみで~」から先は今(2024年9月5日)書いたけれど、それよりも前の文章は当時の自分が書いたものそのままだ。

1年のときを経て続きを書いたので(それも短時間で)、「文章的にちょっと違和感があるかな?」「同じ内容を繰り返し書いていて、まとまりがないかな?」などという気もするけれど、過去の文章にいま手を加えてしまうのもな……という感情があるので、そのまま公開することにした。

そら / Sora

通信制高校に在籍中の17歳。 気に入った本や、日々の生活を通して感じたことなどを思いのままに綴ります。 趣味は読書、手芸、それに音楽を聴いたり歌ったりすることです :) I am Japanese, 17 years old and a homeschooler. Keep up with my daily life and journals!! Fav -> Reading, Handmade, Music, etc

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  • Post last modified:September 5, 2024
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