読書記録 – 赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア

読書記録 – 赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア


*Please note that this page may contain some affiliate links.
※当ブログでは、アフィリエイト広告(リンク)を利用しています。



『赤ずきんとオオカミの トラウマ・ケア 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本』
白川 美也子 著, アスク・ヒューマン・ケア, 2016年5月26日


どんな本?

 おなじみの童話「赤ずきん」を下敷きに「トラウマ」すなわち「心的外傷」について、当事者や支援者、ひいてはそれに関わる周囲のさまざまな立場の人たちに向けて分かりやすく説明してくれる本。堅苦しい文体などというわけでもないので、「トラウマについて知りたいな。」と思った人が軽い気持ちで手に取ってみるのにもぴったりの1冊だと思う。
(※ただし、内容はべつに『ものすごく軽い、さらりとしたもの』というわけではない。専門的なことがらなどについて触れられている部分も、たくさんある。)

気になった箇所

 大容量のトラウマ記憶に圧迫されて、「今・ここ」がちっぽけになってしまっているのです。作業テーブルの空いた場所、つまり「ワーキングメモリ」が少なくなり、ADHD(注意欠陥多動性障害)のような状態にたやすくなってしまいます。性被害や犯罪被害など大きなトラウマ体験のあとに、片づけなどができなくなる現象は、こうしたことも関係しています。

P22

 けれども、リラックスしたり、身体を使って今を意識する作業をしたりすると、「自分が自分の身体の中にいて安心できない」感じに気づくかもしれません。リラックスすると覚醒水準が下がり、抑圧していたイヤな記憶がよみがえることがあるからです。その場合、54321法(※)など「集中しながらリラックス」するような方法がおすすめです。

※54321法:
今ここで見えるもの・聞こえるもの・感じるものを、最初は5つずつ口に出し、次に4つずつ、3つずつ、……最後に1つずつ言う。Yvonne Dolanによる外界集中型自己催眠技法。

P23
道を照らすヒント

 慢性複雑性のトラウマは実は、DVや子ども虐待という形で巷に満ちあふれています。
 PTSDが診断名として確立したのは1990年代でしたが、戦争や単回の性暴力から構想されたPTSD概念だけでは、それらの被害をうけた方々の症状を拾いきれないという意見も当然出てきます。
 アメリカの精神科医、ジュディス・ハーマンは多数の臨床例の集積から「複雑性PTSD」という診断基準を作り、トラウマ研究の世界的権威であるべセル・ヴァン・デア・コークは、統計学的手法を用いて「DESNOS」という診断基準の試案を作りましたが、それはとても類似していたのです。(153ページ参照)
 DESNOSはA~Eまでの5つの症候として整理され、慢性化したトラウマが引き起こす状態を理解するのに役立ちます。
 まずAは、感情隔世の統御における変化。慢性的な感情とりわけ怒りの調節障害、そして自傷や自殺行動や、衝動的で危険な行動の制御障害がこれにあたります。
 Bは、注意や意識における変化です。健忘や解離がこれにあたります。
 Cは身体化、これは一種の解離の症状でもあります。頭痛、腹痛から始まり、全身の痛みなどもこれにあたります。
 Dは慢性的な人格変化。自己意識の変化、加害者に対する認識の変化、人が信じられない、加害や被害を反復してしまうという対人関係の変化です。
 最後がE、意味体系における変化。絶望感と希望の喪失、以前の自分を支えていた信念の喪失です。
 そして6つめに、私は広い意味での嗜癖(アディクション)を付け加えたいと思います。ここにはアルコール・薬物依存のみならず、いわゆるプロセス嗜癖(行為・行動への依存)が含まれています。摂食障害から買い物依存、インターネット依存、性依存から暴力まで、視野は広いものです。
 これらの症状を見ていくと、これまで使われてきたさまざまな診断名——解離性障害、身体表現性障害、身体化障害、境界性パーソナリティ障害なども、DESNOSとして説明できることがわかります。
 つまり、こうした病態の背後には慢性化したトラウマがあるのではないか……という投げかけとも言えるでしょう。DESNOSは、回復への道を照らすヒントになる重要概念なのです。
 そして朗報です。WHOによる国際疾病分類の最新版「ICD-11」が30年ぶりに改訂され、2018年6月に公表されました。そこにはPTSD(心的外傷後ストレス症)と並んで、新たに複雑性PTSD(複雑性心的外傷後ストレス症)が入りました。その内容は主要三症状に、①感情の調節障害、②否定的な自己認知、③対人関係の問題、の3つが加えられたのです。
 これまでずっと人格や行動の問題に帰されてきたことが、虐待など慢性複雑性トラウマの影響だと認められるまでは、このように長い時間がかかったのでした。

P37~38

 涙の理由が分からないのは、まだ自分の体験に感情のラベルがついていないから。感情を認知できなくなるのはトラウマ体験の特徴です。でも体験と感情がつながりかけているからこそ、涙が出てきたのです。

P56

感想と思考

 実はこの本、少し前に読んだ『子どものトラウマがよくわかる本』の最後の方のページに、同じ著者の他の本として紹介されていたことで知った。

⬆️この本ね。
(まだブログ記事にはできていないのだけれど……。ちなみに、他にも何冊も「もう読み終えたのにブログに書けていない本」がたまっている。早いとこ完成させてしまいたいのに!笑)

 同じ著者だということもあってか、「あ、この内容は以前にもどこかで触れたことがあるぞ」と思えた部分もいくつかあった。けれどそれと同時に、初めて知ったこともたくさんあった。よって今日はその中でも、先ほど「気になった箇所」の部分で引用した4つを中心に、今の自分が思ったことや考えたことなどについてここへ書いておこうと思う。


1)「ワーキングメモリ」についてのこと

 この本を読むまでにもなんとなく、「ストレスがかかったりしたときには片付けができなくなったり、部屋が異様に散らかったりしてしまう」ということについてはどこかで聞いたことがあったような気がするし、実際に自分も体験として持っていたりした。
 けれど今回本文中ではっきりと書かれていたのを読んだことで、「やっぱりそうなんだ!」と再認識できた。
 また、PTSDは後天的な出来事が原因で起こるものなのに対しADHDは先天的な脳のあれこれによって生じるもの(←の、はず。間違っていたらごめんなさい)なのに、そのどちらにも似たような症状が現れることがある、というのはとても興味深いなと思った。

2)「身体のなかにいやな感覚が湧きおこってくる」ことに関して

 これもまた、読んだときに心底驚いた。というのも、今まで~現在の自分はまさにこの感覚に悩まされていたし、それに対して怖いなという感情さえ持っていたからだ(例えば私の場合、「運動不足を解消しよう!」と思い立ちストレッチを普段よりも念入りに行った後などには、この「言いようのない、体の中が怖くて不安で、気持ち悪い感じ」に襲われたりする)。そしてさらに、これに効く対処法が既にあることにもとてもびっくり!した。
 それで今度、またこの感覚に困らせられたときにはぜひ一度「54321法」を試してみようという気持ちになった。また同時に、この対処法の提唱者であるYvonne Dolanさんについても、もっと知りたいなあ、なんてことも思った。

(※今少し調べてみると、⬇️の本『解決の物語―希望がふくらむ臨床事例集』が市内の図書館にあった!今度借りてみよう。なんだか内容が難しそうな気もするから、読み切れるかはわからないけれど。)(※こちらはアフィリエイトリンクではありません。)

Amazon.co.jp
www.amazon.co.jp


(あとは、⬇️の本『解決志向アプローチ再入門―臨床現場での効果的な習得法と活用法 』も存在するみたい。でもこちらは図書館にはなかったから、当分は手に取ることはできなさそうかも。)(※こちらはアフィリエイトリンクではありません。)

Amazon.co.jp
www.amazon.co.jp

3)「DESNOS」についてのこと

 私は実は、引用箇所の後半部分のこと……すなわち「ICD-11にて、複雑性PTSDが正式に入ったこと」はすでに知っていた。しかしその前の部分で取り上げられている「DESNOS」についてはまだ、聞いたことがあるな~くらいでしかなかった。だから今回この本で、今一度確認できたことはとても良かった。
 またジュディス・ハーマンとべセル・ヴァン・デア・コークについてはそれぞれ、


⬆️の本で出会ったことがあったため、これらの本たちを思い出しながら今回の文章を読むことができた。
(とはいいつつも。実は上記の2冊はどちらもまだ、途中までしか読めていないのだ(少し難しくて、一旦脇に置いていた……)。けれどこれを機に「再チャレンジしてみるぞ!」という気持ちになれた。ありがとう、赤ずきんたち~!!笑)

4)「理由の分からない涙」についてのこと

涙の理由が分からないのは、まだ自分の体験に感情のラベルがついていないから」という文章を読んだとき私は、「なるほどな~」と思った。それから、「これって『トラウマ記憶のフラッシュバック』にも、どこか通じる部分があるのでは?」とも思った。
 この部分で説明されていた「理由の分からない涙」が「まだ記憶に、感情のラベルがついていないから」出てくるのと同様に、フラッシュバックもまた「記憶が正常にラベリングされず、そのときの全ての記憶や感覚がそのまま瞬間冷凍されている」ことが原因で起こる(←はず。間違っていたらごめんなさい)

 トラウマ記憶を体験として一度に咀嚼するには大きすぎます。そこで、いわば脳の中で冷凍保存されるのです。日常の記憶とは違って、なるべく思い出さないですむようしまいこまれます。解離という、いつもの自分とは壁で隔てられた冷凍庫にしっかり入れて、冷凍するのです。ですからそこには、トラウマを受けたときの五感、感情、認知や思考が、そのときのまま冷凍保存されています。

P13

 なんだか双方に共通点があるような気がするのだけれど、でもまだよく分からない……。今の自分は、そんな気持ちを持っている。
 これからもっとたくさんのことを知ったり経験したりすれば、いつか分かるときが来るのかな?なんて、思ったり。


 ……ふう。長かった!笑
今回のページで書くのは、とりあえずここまで。けれどやはり他にも、詳しく知りたいなと思った箇所がたくさんあったことも事実だ。
またもう少し経ってから読み返し、さらに深めたいなと思えた1冊だった。 😉

そら / Sora

通信制高校に在籍中の18歳。 気に入った本や、日々の生活を通して感じたことなどを思いのままに綴ります。 趣味は読書、手芸、それに音楽を聴いたり歌ったりすることです :) I am Japanese, 18 years old and a homeschooler. Keep up with my daily life and journals!! Fav -> Reading, Handmade, Music, etc

Leave a Reply

  • Post last modified:October 28, 2023
  • Post category:Books